小田原のどか 作品展《↓》

今から70年ほど前—
1946年から1948年までのあいだ、長崎市松山町に作者不明の記念標柱が存在していた。その標柱は5メートルもの大きさで矢羽根を模しており、自らが突き刺さっている〈この地点〉を指し示していた。「慰霊」や「平和を祈る」といった感情ではなく、〈ここ〉ということ、ただそれのみを示し続けよう、という意志がみてとれるその記念標柱を、私は戦後日本彫刻の「起点」として捉えることができると考えている。本展では、写真と彫刻の関係性を問い直すことで、〈かつて・あそこ〉にあった「起点」を〈いま・ここ〉に提示することを試みる。

カテゴリー
作品展示
会期
2014年9月24日(水)ー 11月11日(火)
開館時間
9:30〜20:00(ただし10月29日のみ17:00まで)
入 館=閉館の15分前まで
観覧料=無料
休館日=土日
会場
同志社女子大学 mscギャラリー
(京田辺キャンパス 知徳館6号棟1階 C163)
一般入場可 / 入場無料
お問い合わせ
情報メディア学科事務室
0774-65-8635

小田原のどか氏 プロフィール

1985年宮城県仙台市生まれ。多摩美術大学彫刻学科を卒業したのち、東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻を修了。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科博士後期課程在籍。2003年より「彫刻」について考えを巡らせることを通して作品制作を行う。2008年から下向きの矢印記号を彫刻として提示する『↓』シリーズを継続的に発表する。制作活動と並行し、いくつかのプロジェクトにも携わる。主な展覧会に、「甑島で、つくる。」「トーキョーワンダウォール2008立体部門」「第12回岡本太郎現代芸術賞入選者展」「六甲ミーツ・アート芸術散歩2011」「floating view2」。2013年には、フェスティバル/トーキョー13公募プログラム sons wo:『野良猫の首輪』(劇作・カゲヤマ気象台)に作品を提供。東京、大阪、静岡の3都市公演において会場内で作品展示を行った。第12回岡本太郎現代芸術賞入選、NCC2010受賞。
http://odawaranodoka.com

関連イベント

小田原のどか氏講演会『つくる、そして考える。』
2014年10月20日(月)16:45〜18:15
同志社女子大学 京田辺キャンパス 知徳館 C131

REPORT

若手現代彫刻家としてご活躍の小田原のどか氏の作品展、《↓》を開催しました。

今回の展示は、1946年に長崎原爆投下位置に立てられた巨大な矢羽根型の記念標柱がモチーフとなっています。この矢羽根は原爆投下の1年後に立てられ、わずか2年で撤去されたモニュメントでした。作者不明のこの記念標柱の存在を知り興味を惹き付けられた小田原氏は、これを模した作品を制作されました。小田原氏が1946年の記念標柱に着目したのは、これまでの作品制作の中で辿り着いた現代彫刻の原理、「場所を指し示し、風景を固定する」を具現化したものだったからです。

mscギャラリーの中央に矢羽根型のネオン管が立てられ、そこから発せられる赤い光がギャラリー内部を照らし出しました。矢羽根型の灯体がギャラリー前面の、そしてその向こうにある廊下のガラス面に連なって反射するのを、氏はとても面白いと感じられたそうです。

この作品を中心に、標柱を取り上げた当時の新聞記事の写真4種類を、拡大し額装したもの、透明シートに印刷したもの、ポストカードに印刷された持ち帰り自由ものと、3種類の見せ方で展示しています。そのうちの透明シートの作品とポストカードの作品からは、矢羽根に書かれている『原子爆弾中心地』の文字がデジタル処理で消されています。文字の消去により抽象性を得た写真は、鑑賞者が文字の持つメッセージに縛られずに自身が目にした物について考えられるようになっています。

これらすべての作品は、普段は無意識に認識している「場所」というものについて、鑑賞者に再考させることを目的としています。

どの展示方法においても、その前に立つ鑑賞者は今自分がいる地点について、そして目前に提示される古い写真が示す場所について、これらは一体どこなのかと思いを巡らせることとなるのです。

作家・作品の詳しい説明は講演会ページに掲載しています。
小田原のどか 講演会「つくる、そして考える。」

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2015年度 同志社女子大学 情報メディア学科 学生公募展「八展 − やってん」